セル画と4KやHDの相性が良い理由

(この記事は仁科監督の作品MAGICを参考に書かせていただいてます)

 

セル画と高画質映像は相性がいい。

・セル画自体の画素数が原子・分子レベルであること。

・線の強弱をつけて密度を上げやすい。

・絵の具で塗っているため、画面がのっぺりしづらい。

・撮影のエフェクト処理が必要ないため、マシンのスペックが必要ない

・画像の性質がそもそものデジタル彩色と違う。

などがあげられるが、正直なところ、2年間セル画でアニメを作ってきて「これが違う」という確信的な部分は分からなかった。しかしセル画はいい。

セル画自体の画素数が原子・分子レベルであること。

1920×1080の解像度を大きいと感じた昨今。

しかし、フィルムにはまだ解像度の概念があるが、セル画は解像度という次元ではない。

冗談のように聞こえるかもしれないが、本当にそれに尽きる。

 

デジタル作画でSD解像度の作画をするのとHD解像度の作画をするのとでは、若干HD解像度の方が密度が高いため、大変である。

 

4K解像度になったら動画のパス線はパス線にみえてしまう。

そして、塗った部分は均一な色になってしまいエフェクトをかける必要がある。

 

さらにはSD解像度で描いたものをHDにする場合、アップコンバートで疑似的に解像度を上げるしかないが、セル画は逆である。

 

しかし、セル画は、いわばアナログの1枚絵といっても過言ではない。

どんなに細かくスキャンしても、画像の荒れは出ない。

逆に4Kサイズ、HDサイズにダウンコンバートしなくてはならない画像である。

 

小さな画像を拡大するよりも、大きな画像を縮小した方が、画像は綺麗であることは言うまでもない。

 

描いている側としても、いままでの原画・動画と変わらない作業ができる。

彩色だけはデジタルより絵の具の乾き時間がある分遅くなるという難点がある。

線と塗りの違い

 デジタル作画の場合、線は均一線。塗りはバケツ塗りである。

 

しかし、セル画の場合は均一線の必要はなく、線に強弱をつけやすい。

(また、Gペンによる漫画のような線でも色を塗ることが可能)

 

絵の具はエフェクトをかけなくても、十分美しい発色で、デジタル塗よりはるかに画面がのっぺりしにくい。

 

また、色がRGB(光の三原色)ではなくCMYK(絵の具の三原色)で描かれる点もポイントかと思われる。

 

生でセル画を見たことがある人は分かると思うが、その美しさはエフェクトをかけずに十分見れるクオリティである。

撮影のエフェクト処理が必要ないため、マシンのスペックが必要ない

デジタル作画の4K映像にエフェクトをかける場合かなりのマシンスペックがいるし、高解像度の分、かなりの処理をしなければ画面が持たないという心配がある。

 

セル画で描かれた絵は前述のように言わばアナログで描いた1枚絵だ。

それをデジタルでどうこう編集する必要はない。(むしろできない※後述)

だから重いエフェクトをかける必要がない。

 

普通に考えたら重い4Kとはいえエフェクトのかかっていない連番のJPEG画像を書き出すのに必要なスペックはそこまでない。

セル画はフィルムで撮影されていたが、デジタル一眼でも撮影は可能である。

固定概念でセル画はフィルムで撮影する必要があると思われるが、そんなことはない。

むしろデジタル一眼との相性も悪くないのだ。

 

フィルム写真とデジタル写真は印象が違うが、綺麗にデジタル現像をしたフィルム写真はデジタルとあまり変わらないというのが私の持論である。

 

デジタル1眼を使用して撮影した実写映画はフィルムとは印象が微妙に違うが、センサーの大きさがフィルムに近いため、フィルムに見劣りがしない映像になっている。

 

フィルムかCMOSセンサーの違いよりは、「レンズを通した映像である」ということが私は重要だと思う。

 

セル画をデジタル一眼で撮影した画像とスキャンした画像ですら、デジタル一眼の方が「セルを肉眼で見た印象」に近いことが分かった。

(撮影は実験中はPanasonicを使用、本編はNikonのカメラを使用)

 

デジタル上で制作した画像はRGBで作られた画像であり、肉眼で見た印象に近づける必要がない。

しかし高画質なセル画は肉眼でセルを見たイメージに近い方がいいと私は思う。

 

肉眼に近いイメージを持たせる3MOSセンサーとセル画の相性は決して悪くないと私は思うし、何より現像の手間がかからない・その場でチェックできるというのもポイントが高い。

 

何より別の畑ではあるが、フィルムにこだわってクレイアニメを作る作家が少ないことも特筆すべき点である。

そしてクレイアニメの撮影ソフトは一部違いはあるが、セル画の撮影に応用が可能である。

画像の性質がそもそものデジタル彩色と違う。

上の画像はセル画をデジタル撮影したものである(背景は差し替えてあります)

デジタル撮影ができる人は、ぜひこの画像をPhotoshopやaftereffect上で加工してみてほしい。

 

オーバーレイをすると画面がどぎつくなるし、ディフュージョンをかけてみても色がきつくなってしまう。

スクリーンと乗算で陰影をつけるくらいしか、この画像にかけるデジタルエフェクトはないと私は思う。

スポイトツールで色を見るととても暗くてはっきりしてる色となっている。

そもそも画像の性質がデジタル作画の物とまったく違うものであることがお分かりいただけるだろうか。

 

これはセル画とデジタルの一番の違いであり、利点でもあり、弱点でもある。

 

利点はこのままでも十二分に見れる絵であること。

多少アレな作画でもセル彩色の場合違和感がなく見れる。

そして実写の光学素材との相性は抜群である。

 

しかしデジタルエフェクトで修正したい場合は大きな弱点になりかねない。

(上の画像をデジタルの色調で塗ってみた例。画面がのっぺりする↓)

まとめ

セル画と高画質映像・デジタル映像は相性がいい。

 

上記以外でも、色パカ修正程度ならデジタルでも可能なことや、写真であるため実写用のプラグインとは相性がいいこと等色々な利点がある。

 

逆に弱点は撮影台の汚れやほこり・ゴミ・静電気に弱いという弱点もある。

 

印刷したデジタル素材をデジカメで撮影するだけでもまるで違う。

(セル画再現Part2も参考にしていただけたらと思う。)

 

高画質・軽いというのがセル画の最大の利点である。

 

絵の具とセルを確保できれば、ぜひ試してほしい。

 

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